酒粕と酒の関係

 さて、寒さも頂点に達する2月は酒粕の最需要期でもあります、粕汁にして
も、よいし鍋にしても、黒砂糖を挟んで、オーブントースターで焼くのも美味
しいですね。でも、よく見ると、酒粕でもいろんな種類があるのがわかります


 分厚い粕・薄い粕
 だいたい食べて美味しいのは分厚くて、柔らかい粕ですが、あれはどうして
分厚いかご存知でしょうか。
 別に薄い粕はぎゅうぎゅうと圧かけてしぼっているから薄いわけでは、あり
ません、これは米の溶け具合によるものなのです。

 どんな蒸し米で造るか?とかどういう酒母でつくるか、そして発酵の時の温
度などで、米の溶けかたは色々と違ってきます、条件が揃っているにも関わら
ず、溶けない時もあるし、溶け過ぎてしまう時もあるし、なかなか思い通りに
いかない部分でもあるようです。

 一般には山廃や生酉元といった昔ながらの仕込みの場合は、酵母が活発に働
いて、米が溶けやすいという事も言われています。
 これは、酵母が厳しい環境で鍛えられるためだそうですがとにかく、こうし
た酵母の状態や色々な要因が重なり合って、米が溶けたり溶けなかったりする
のです。

 では、米が溶けなかった、もしくは溶かさなかった場合はどういう酒が出来
上がるかというと、米が溶けないと当然お酒の中のエキス分が低くなるので、
軽快なお酒になります。
 吟醸系のお酒などは、いかに米を溶かさないでつくるかという所がポイント
で、それによって淡麗なきれいな味のお酒をつくるのです。
 したがって、粕とては、吟醸をはじめとする淡麗な酒をつくったあとの粕は
分厚く、ぽってりしていて、「裏打」とよばれる米の粒の形がそのままたくさ
ん残っている粕です。

 それに対して、米がよく溶けた状態で出来上がった酒は、エキス分がたっぷ
りある濃厚な重たい酒になります。
 昔ながらの造りをしている蔵の粕はたいてい薄くてぺらぺらで、米の形など
は跡形もありません、その分酒は濃厚になっているのです。
 これはお酒の性質によるちがいなので、どちらが良いかというのは好みの問
題になってきますが、その蔵の酒粕を見ると、今年はどういう酒が出来ている
か検討がついてきます。

 また、まったく板の形になっていないものもあります。
 これは昔ながらの「袋しぼり」「舟しぼり」と呼ばれる搾りかたをしたもの
で、木綿などの袋にもろみを詰めて舟と呼ばれる長方形の木製の箱の中に袋を
しきつめ、それを上から油圧で押して(昔は錘をテコの先につけて搾った)しぼ
る搾り方で搾ったお酒の粕で、最近では大吟醸クラスの酒しかありませんので
、かなりいい香りのする粕のはずです。

 これがさらに高級な酒になると、首つりと言われる方法でまったく搾らずに
袋に入れたもろみから垂れてくるしずくだけを使った酒の粕があります。
 これで出来た酒が「しずく酒」とか「と瓶取り」という酒です。
 これはほとんどお粥のような状態ですので、あまり一般にはでまわっていま
せん。

ぺらぺらの粕の調理法

 ぽってりと分厚い粕はどんな調理法でも美味しいですが、ぺらぺらの粕の場
合は、粕汁などにする時一度、お湯と、粕を容器に入れて、電子レンジで暖め
るとよいそうです。すると粕が柔らかくなってすぐに戻り美味しくいただける
という事、これは蔵の人から聞いたお話です。