しぼりたて

 現在、ちょっと日本酒の取り扱いに熱心な酒屋さんでは、搾りたての新酒が店頭に並
んでいる事と思います。そこで、今回は「搾りたて」のお酒について少し書いてみたい
と思います。
 一口に「搾りたて」のお酒といっても色々なタイプがありますが、一つの共通点とし
てはたいていが加熱殺菌していない「生酒」であるという事が言えます、生酒の特徴と
しては、まず「香り」です。日本酒が発酵する時に生じる麹のフルーティな香りがたく
さん残っているので、このような香りになります。これがまず一つの特徴と考えてくだ
さい。
 後は、搾った後の処理によって色々なタイプに別れていきます。
 搾ったまま、何もしないのが、「搾りたて生原酒、無濾過」です。この無濾過にも二
通りあり、本当にしぼったそのままを瓶詰するものと、搾ったのちにタンク入れ、澱を
沈めて上澄みの澄んだ部分を瓶詰めする、つまり澱引きしたものとがあります。澱引き
しないものは、当然すこし濁っていて、見ればすぐに分かります、代表的なものに石川
県の菊姫山廃純米無濾過k-7などがありますし、澱引きしたものとしては和歌山の名手酒
造の「黒牛 無濾過」や灘の浜福鶴銘醸の「空蔵」などが有名です。

 また、この段階でいったん搾ったものに新たに酒粕を加えて濁り酒とする場合もあり
ます、濁り酒は目の荒い木綿などで搾って濁り酒にする場合とこのように後から酒粕を
添加する場合があります、後から酒粕を添加する場合、実際、そのお酒の粕を添加する
必要もないので、より上級の大吟醸や吟醸の酒粕を添加する場合もあります。このへん
はその蔵の考え方です。

 次は、濾過をする場合です、濾過にも色々ありますが、まず炭素濾過のお話をします
。炭素濾過は、粉末の活性炭をお酒に直接投入します。するとお酒の中の酵素などか炭
素に吸着されます、後は、炭素の大きさより細かい目のフィルターで濾過するときれい
に濾過ができます。フィルターをかけるまえは黒く濁っているのでちょっとびっくりし
てしまいますが、フィルターをかけると綺麗に澄んだお酒が得られます。

 この方法のポイントは、どれぐらいの活性炭を投入するかという事で、その投入量に
よってお酒の味わいはだいぶ変わってきます、良く蔵に行くと「キロ500」とか「キロ10
00」などという言葉を聞きますが、これは1キロリットルの清酒に対して何グラムの活性
炭を投入するかという事を表しています。だいたい通常はキロ500〜2000が通常です。

 一般に濃厚な味わいを残したい場合は、活性炭を少な目に入れ、軽いお酒にしたい場
合は多めに投入します。

 その他、濾過には様々な方法があります。
 基本的には「リーフ型」と呼ばれる円筒形筒の中にくるくるとステンレスの網に装着
された濾紙を巻き付けていくタイプのものと「ディスク型」と呼ばれる円盤状のフィル
ターを幾層にも重ねていくタイプがあります。

 濾過の仕方も圧力を加えて強制的に押し出していく「限外濾過」、圧力をかけない「
自然濾過」があます。「限外濾過」はタンパク質や酵素などを除去するのに使い通常は
この方法です、これに対して「自然濾過」の場合は濁り酒などに使う荒い濾過の方法で
す。

 また、フィルターにも様々なタイプがあり、中でもミクロフィルターなどを使うと、
お酒の中の不純物を全て取り去る事ができるため、常温保存できる生酒などもできます
。ビールなどはこの方法で生ビールを造っていますが、味はそっけないものになってし
まいます。(ビア・ホールの生ビールはミクロフィルターを通していない生なので、同
じ生でも美味しいわけです。)