「呑切り」と「火落ち」

◆呑切り

   毎年6〜7月の間に蔵元では「初呑切り」が行われます、これは、前年の冬からそ
  の年の春までに作られた清酒の熟成状態を確かめる作業です。

   昔は、今のように温度管理ができなかったので、気温が上昇してくる6〜7月、酸
  化していないか、*火落ちしていないかを確認するためにこの時期に行われていまし
  たが、現在でも、その習慣が残っていて、この時期に酒質の変化をチェックしま
  す。
   だいたい、「呑切り」は「初呑切り」以降、一月ごとに行われ、酒質に疑問のあ
  る場合は不定期に行われます、これを「間呑切り」と呼びます。

◆火落ち

   火落ちは、現在でも時折起こる清酒の微生物汚染のことですが、これは「火落ち
  菌」と呼ばれる乳酸菌の一種が清酒の中で繁殖することで起こります。
   通常、清酒のように15度にもなるアルコール度数の中では細菌は繁殖できないの
  ですが、「火落ち菌」だけは例外で、強いアルコールに対する耐性を持ち、清酒の
  中でも繁殖する事が出来ます。
   この「火落ち菌」に侵された清酒は白濁し、香りが独特の香りに変化します。の
  で、もしも、このような清酒に出会った時は、販売店かメーカーに言いましょう。

   「火落ち菌」の種類にも色々あり、香りの変化が激しいものと白濁が激しいもの
  がありますが、とりあえず、濁り酒や無濾過以外の酒が濁っていたら、「火落ち」
  を疑った方が良いでしょう。また、火落ちは28度〜30度で最も起こりやすいので、
  この季節は要注意です。
   以前は、火落ちを防ぐためにサリチル酸を防腐剤として加える製造者がいました
  が、現在では人体に悪影響があることが分かり、添加できなくなっています。
   現在は、有効な火落ち抑制物質がなく、研究中のものとして、人体と清酒の味香
  に影響のないといわれるバクテリオシンという物質が有望視されています。

●火落ちした酒の行方

   もし、「火落ち」した酒が多量に発生した場合は通常再び加熱殺菌され、炭素濾
  過、除酸剤などを加えられた後さらに加熱殺菌し、格落ちのパック酒などに混ぜら
  れるのが普通です。