その二

 ☆☆山小屋と酒の日々 スズメバチの恐怖☆☆
 
 鶯の声がうるさいほどに山にこだまする、すがすがしい朝ですが、昨夜(今朝)の深酒で頭はがんがんしています。
 とりあえず、デッキでお茶を一杯。

 先に起き出していたN2氏は風流にも、鶯と鳴き比べをしていたとか。彼は、風流と変人の境界に居住する住人ですので、時折面白い事をしてくれます。
 二人で、お茶を飲んでいると、そのうちにK氏が起きてきて、ギターを弾き始めました。山小屋には昔懐かしい象の形をしたミニエレキギター「通称ぞうさんギター」が常備されていて、太陽電池で鳴るようになっています。曲目はなぜかベンチャーズが多いのが特徴です。
 山小屋だったらアコースティクギターにして「カントリーロード」でも弾けばいいのにと思う方もいらっしゃるでしょうが、ひねくれた我々の感性では、ぞうさんギターでパイプラインなのです。

 しばし、うぐいすの声に聞きほれながらお茶を飲み、お手洗いで用を足しました。

 このお手洗いは一昨年に完成したのですが、非常に広く、三畳ぶん以上の広さがあります。2メートル以上地下を掘り、バクテリアを添加して排泄物を分解するようなしくみになっています。

 さて、さっぱりしてから風呂を沸かすために薪割りを始めました。

 小さな斧しかないので、けっこう薪割りはコツがいります。
 水鴎流波切りの太刀、とか次顕流、蜻蛉の構えとか一人で言いながら薪を割っておりました。

 一汗かいてから、ビールでのどを潤し、火をつけました。

 山小屋の風呂は屑鉄で出ていたスウェーデンのステンレス製、介護用につくられたもので、長さが2メートル以上もあり、大人4人が楽々入れます。
 しかし、でかい分、沸かすには時間がかかるというのが、世の常楽しい事をするにはそれなりに苦労するというわけです。

 その間にN2氏は鰹をさばき始めました。
 実は、今回の目的の一つは、山で鰹のタタキを食べるという事だったのです、ところがここで、以外なアクシデントが起きました。
 N2氏がどうも鰹が酸っぱいというのです、氷付けにしてきたはずが、どうも古かったようです。
 我々は呆然としてしまいました。
 ああっせっかく色々準備したというのに、肝心の鰹が食べられないとは・・・・。
 仕方がないので、鰹はそのまま醤油と酒とニンニクで煮つけられ、フレークになってしまいました。
 しかし、みょうがと葱をたっぷりかけて食べるとこれはこれで、美味しく、この為に持っていった、加賀鳶の純米吟醸との相性もばっちりでした。

 すすむ、すすむ!

 あと、鶏の胸肉がありましたので、これを塩こしょうして、油で炒め、赤ワインを入れて 10分ほど蒸して、鶏肉を取り出し、出てきた肉汁にバルサミコを少量加えて一煮立ちさせて、ソースにし、鶏肉にかけます、私の創作料理?「濱田風、鶏のワイン蒸し」の出来上がり、これは簡単で美味しいので、みなさんも試してみてください。鶏にバジルやなんかをかけてもいいですよ。


 さて、せっかくなごやかで、幸せな食事をしていたのに、ここでまたまた、アクシデントが起こりました、鰹をさばく匂いにひきつけられたのか、スズメバチが飛んできたのです。4cmくらいもあろうかという大物です。

 普通の蜂ならば、べつに怖いことはないのですが、スズメバチだけは、ひたすら動かないで飛んでいくのをまたなければいけません、下手に刺激して刺されると、生死にかかわります。

 ところが、こいつはまるで脅かすつもりなのか、ほんの目の前3〜4センチをぶんぶん飛んで、ほとんど顔に止まりそうでした。
 顔に止まられた日には発狂しそうです。
スズメバチはやがて去りましたが、さすがに生きた心地はしませんでした。

 一昨年スズメバチがトイレに巣を作り、撤去するのに大変な目にあいましたが、それ以来、スズメバチには度々肝を冷やされています、蜂の巣撤去のはまた別の機会にお話する事にしますが、世の中にはスズメバチのワクチンというものが存在するらしいのです、これは医療用なので、一般の人では入手できず、毎年林業などに従事する方が亡くなっているそうです、国もかたい事を言わずに、ワクチンを出せばいいのにと思う今日この頃です。
 我々はその後、午睡を楽しんだ後に、神戸に帰ったのでした。
 今回の山小屋ははこれでおしまいです。