米についての研究2

 今回は酒米の中味を調べて見ることにしましょう。

 お酒を造る場合普通、お米を磨いて使います。どれぐらい磨くかによって、出来るお酒の酒質に大きな影響がでます。普通酒と呼ばれているクラスのお酒はだいたい70%ぐらいの精米歩合、つまり、お米の外側30%を糠として削って使用します、そしてこれが吟醸酒と呼ばれるクラスになると60%以下まで削ります、さらに大吟醸と呼ばれるクラスになると50〜35%以下、もうお米が半分以下の大きさになるまで削るのです。

 なぜ、ここまでお米を磨く必要があるのかというと、お米の外側には、蛋白質や、油分など、お酒づくりには余分な成分が含まれていて、これが、中心に近づくほど減っていくからなのです。
しかし、粒の小さなお米では、あまり削ると小さくなりすぎて割れてしまったりします。そこで、粒の大きなお米が酒造好適米として珍重されるわけです。

 さらに、前回も少し書きましたが、酒造好適米の条件には心白と呼ばれるお米の中心にある白い塊があることがあげられます。これは食米には適さないため、コシヒカリやササ錦にはあまり見当たりませんが、この心白があると麹菌が着きやすく、(つまり澱粉の間に隙間があるために、麹菌が根を下ろしやすい、筆者は固い土より耕された柔らかい土の方が農作物が良く育つと理解していますが・・・・)良いお酒が出来る条件になります。しかし、逆に、心白は柔らかいので精米の時にお米が割れてしまう原因にもなります。だから、心白の大きなお米はあまり精米できません。山田錦が良いのは、心白があっても棒状(以前は円盤状と言われていましたが、最近棒状であることがわかりました)なので、割れにくく、しかも粒が大きいというお酒造りに必要な条件をすべてみたしているお米ということになるのです。

稲の形態

 それでは先ず稲の構造を見ていきましょう、図1のようにお玄米はもともと、護頴(ごえい)、外頴(がいえい)、内頴(ないえい)、小穂軸(しょうすいじく)に囲まれています、これを総称して籾殻といいます。玄米は小穂軸とつながっていますが、籾すりによって頴を取り除く際に接点から折れて離れます。


玄米の構造

 玄米の横断面は図2のようになっています。

 図3のように最も外側に1細胞層の表皮があり、その下に6〜7細胞層の柔細胞組織があります。、この組織は完熟米では細胞は半ば崩壊して海綿状になっていますが、この一番奥の細胞だけは細胞壁が厚くなり、崩壊せずに整然と米を覆います、そしてさらに、この下の細胞は成長とともに縦方向にだけ伸びます。そのため、米の成長にともなって、よこ方向に隙間がひろがり、お米全体を横糸のないネットのように覆います、これを管状細胞と呼び、さきほどの横細胞とともに果皮の繊維構造を形づくっています。そして図2にもありますが、果皮には腹面と背面、そして背面寄りの側面に計4本の維管束があります、この中で背面の維管束が最も太く、これが胚乳への栄養の輸送通路になります。あとの3本は背面に比べて細く、お米の成長のための栄養や水分の補給パイプになっています。そして、さらにこの下に種皮と呼ばれる膜状の組織があり、ここまでの部分が食米では糠となります。

 このさらに内側が胚乳つまり、白米となるわけですが、その外側は糊粉層と呼ばれ、小型の四角い細胞で蛋白質の糊粉粒、酵素、脂肪などを蓄積し、澱粉は蓄積していません。糊粉層にはαアミラーゼなどの発芽の際に澱粉を溶かす働きのある酵素を出す働きがあり、発芽には重要な部分です。

 このさらに内側が澱粉貯蔵細胞になっていて、中心に近づくほど大型の細胞になっています。酒造にはこの部分を用います。酒造好適米の特徴の一つである、心白もこの部分にあるのです。

それでは次回はお米を収穫してからの加工について調べて行きたいと思います。


文責 
濱田咏児


参考文献

 灘の酒 用語集 灘酒研究会発行

著者   米崎治男/荒川宗男/入江経明/前田 茂