米についての研究

酒米とは

 今回からしばらくお酒を造る米について書いていきたいと思います。

 米といっても、お酒に適した米は食用のお米とは違います。

 酒米の第一の条件は粒が普通より大きいことです。

 なぜ、大きくなければいけないか?

 それは、日本酒の製法に関係があります。

 日本酒は良いものを造ろうとすると、お米の表面の不純物が多い部分を削りとって、中心の純粋な、でんぷんに近い部分だけを使わなければなりません。そのためには、粒の大きなお米でなければ、よく削ることが出来ないのです。

『芯白』さらに、お米の中心に白く柔らかい芯白という部分があるものが良いとされています。これは、お米のでんぷんを糖分に変える働きを持つカビの一種、麹菌がお米に根を下ろす時、芯白があるお米の方が根が張りやすいからです。しかし、この芯白も、大きければ良いというものではありません。芯白があまり大きいと、精米の段階でお米が割れたり崩れたりしてしまいます。

 酒造好適米の王様といわれる山田錦は粒が大きいだけでなく、この芯白が円盤状で、欠けにくくしかも、麹菌の繁殖にも良好な理想的な酒米と言われています。

良質の酒米の栽培条件

『土質』 稲の生育には一般に粘土質の土壌がよく、砂まじり、砂利まじりでも良いとされています。

『日照』日照に関して言えば、山田錦を例にとると10月中旬で晴天の日に一日4時間以上の日照があること、また、台風の被害は大きいのですが、一般に風通しの良い田畑には健康な作物が育ちます。風通しが良いと病害虫の被害が出にくいのです。例えばミカンを例に取ると、紀伊半島西海岸や、長崎、熊本では、ゴロゴロした岩と西日と海からの風で木は小ぶりですが、根はしっかりと張り、みかんは小粒でも甘みの強いものが収穫できます。これは正に風の賜物と言うことができます。

『夜間気温』も大事な要素の一つです植物といえども動物と同じようにエネルギーを消費して、酸素を吸い二酸化炭素を吐き出します。昼間は光合成がそれを上回っていますが、夜になるとその代謝は動物と同じことです。したがって夜間気温は低いほど、基礎代謝は抑えられて養分の消費が抑えられ栄養が蓄積されることになります。

 だから、昼間は日当りが良く夜は冷え込む地域は植物の生産性は高いわけです。

 夏は蒸し暑い日本では夜間涼しい場所というと高地になります。

 山田錦の場合一般に200メートルから500メートルが良いとされています。500メートル以上の高地は一般論としては適地であっても、秋の冷え込みが早く、晩生の稲は実らずに青枯れしてしまい、早生しか育ちません。

『砂漠は稲作向き?』夜間の冷え込みといえば、砂漠ですね、アメリカのカリフォルニアやオーストラリアのニューサウスウェルズの稲作地帯は、もと砂漠であったところを灌漑して稲を作っているので、日照、風通しともに抜群で米の輸入自由化を控えて強敵です。

『水利に関しての問題』水利に関しては、水田は必要に応じて水を供給、排出しなければなりません。きれいな水がいつでも使え、いらない時にいつでも捨てられるのが理想です。しかし、その水源は道路、ゴルフ場、家庭排水、工場に汚染されていて、なかなか理想の水を得る事は難しいのが実情です。

 また、肥料成分が見境なく用水に混入されて米を駄目にしてしまう例も多く、農政の問題点ともなっています。

参考文献

「酒米」〜山田錦の作り方と買い方〜

   永谷正治 醸界タイムズ社

「灘の酒 用語集」 灘酒研究会