ボルドー研究 -その1・地理編-

 寒くなってきました、こんな寒い日はボルドーの赤ワインが恋しくなりませんか?
 がっしりした骨格のポイヤックもいいし、柔らかいマルゴー、力強く繊細なサンジュ
リアン、濃密なサン・テステフ、果実味たっぷりのポムロールやサンテミリオンもいい
です。
 そこで、今回はボルドーについて研究していきたいと思います。

 まず、ボルドーの場所ですが、スペインからフランスに大西洋岸をフランスを1/3ほど
進んだ場所でドルドーニュ川とガロンヌ川という大きな河川が合流している付近から河
口にかけての10万ヘクタールという非常に広大な地域がボルドーです。
 どこまでいってもワイン畑という感じで、車で走っていると葡萄畑が無限に続いてい
るように錯覚してしまうほどです。

 位置的には緯度が北緯45度、日本でいえば最北端の宗谷岬にあたりますが、大西洋と
地中海をめぐる暖流の影響で、北海道よりもだいぶ温暖な気候です。
 年平均気温にしますと17度強になりますし、月の平均気温がもっとも低い1月でも11〜
12度という平均気温、夏場もっとも厚い時期でも23度強ですから、冬は暖かく、夏は涼
しい気候という事ができると思います。

 地理的には北のドルドーニュ川、南のガロンヌ川、そして二つの川が合流したジロン
ド川、すぐ近くの大西洋が気温を安定させ、ワイン生産地域の回りを囲むかのように存
在する、森林が風や塩の害からワイン畑を守っています。
 また、たくさんの川の支流が、ワイン畑の排水を助け、ワイン畑が水浸しになる事を
防いでいるというまさに理想的な環境がそこにあるのです。

 地質的にはボルドーは実に多彩な土壌を持っています。石灰質、チョーク質、礫層、
粘土質、の土壌が存在します。この中でメドックの高級シャトーがある場所の多くは分
厚い礫層の地域で中には3メートルもの礫層のある地域もあります。礫層は豊富なミネラ
ル分を含んでいるのと土地自体が非常にやせているので、葡萄の樹は地何メートルも深
く根を降ろしていきます。
 このように地下深くに根を張った葡萄の樹は変化の激しい地上の環境とは違い安定し
た状態にあるのと、地中深くの豊富なミネラルを取り入れることができるので、優良な
葡萄を実らせる事が出来ます。
 ただし、水捌けの悪い場所では、多量の雨が降ると、根が冠水してしまうので、排水
溝などをよく整備する必要があります。
 ボルドーのグランヴァンがなぜ、素晴らしい品質を持つかは、ワインが高値で販売で
きるので、こうした畑や設備に多額の投資ができるという点が大きいのです。

 さて、川の向こう岸のサンテミリオンやポムロールに行くと今度は、石灰質土壌が主
流になってきます。
 そこで、植えられる葡萄品種もメドックがカベルネ・ソーヴィニヨンが主流であるの
に対して、こちらでは、カベルネ・フランやメルローといったいくぶんソフトな味わい
を醸し出す品種が主流になってきます、こうした事情がメドックとポムロールやサンテ
ミリオンのワインの味わいの違いに反映してくるのです。

●葡萄品種について

 フランスの二大銘醸地である、ボルドーとブルゴーニュ地方の最大の違いは葡萄品種
にあります、ブルゴーニュでは、基本的にワインは単一の品種から造られます、例えば
赤ならば、ピノ・ノワール、白ならばシャルドネといった単一の葡萄品種から造られる
のに対して、ボルドーのワインは基本的に複数の葡萄から造ったワインをブレンドして
出荷するのが一般的です。主に使われる品種は、赤ワイン用として、カベルネ・ソーヴ
ィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、調整用品種としてプチ・ヴェルドー、マルベ
ック、白ワイン用として、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデなどがあり
。これらの葡萄をブレンドすることによって、造り手は自分たちのスタイルを作り出し
ているのです。
 したがって、そのワインの性質がすなわち、その造り手が所有している畑の性質とい
う事はできません、というところで、次回は葡萄品種について書いていきたいと思いま
す。