4月から10月にかけては、ほとんどの蔵元が休造期です。この時期に仕込み を行っているのは一部の大手酒造メーカーですが、中には特定名称酒を小量生 産している蔵元の中にも四季醸造しているところがあります。 当店の取り扱い銘柄、「空蔵」の醸造元「浜福鶴銘醸」さんも、その一つ です。 今回は四季醸造のメリット、デメリットについて浜福鶴銘醸の醸造担当、 小寺さんに色々と伺い、それを元にして記事を書きました。 ○四季醸造のメリット 四季醸造のメリットはなんといっても、人員的な資源です。 今まで、酒造りが冬場のものとされてきたのは、まず、昔は気温が低い 冬場でないと酒造りが出来なかったという事と、もう一つが労働力です。 冬場の農閑期と酒造りの時期が重なる為、ちょうど農家の収入源として 酒造りの現場があったのです。 それが現在では、徐々にそういう状況が崩れてきています。 現在、酒蔵では後継者の不足という深刻な事態に直面していますが、こ れを打開する為に杜氏を初めとする酒造りの集団を社員化しなくてはなり ません。 ところが、ご存じのように、酒蔵では、忙しい時期と暇な時期が極端な ため、安定して社員を雇用する事が難しいのです。 そこで、年中平均して酒造りをする四季醸造のメリットが出てくるとい うわけです。 あと、酒造りのブランクが無くなるので、技術的な面で作業する人の練 度が落ちることがないというメリットもあります。 さらに小さな事としては、麹室の温度管理が楽という事がありますね。 暖房しなくても良いのだそうです。 ○夏季の酒造りのデメリット 夏季の酒造りのデメリットの最たるものはコストです。 冬場にくらべて、冷蔵設備熱にたよりきりの醸造になりますので、冬季 にくらべると二倍の電気代がかかるのだそうです。 まあ、電気代だけならよいのですが、長時間の停電などが起こるとたい へんな事になる事は想像に難くありません。 あと、熱交換期の性能にも限界があるので、あまりに外気温があがると 思ったように温度が落ちないこともあるそうです。 ○次は米の問題です。 秋から冬にかけての醸造は新米が使えますが、夏季の醸造では当然そう はいきません。 浜福鶴銘醸では、この点は玄米を低温貯蔵して、醸造の直前に精米する ということによって、ほとんど差がないようにしているのだそうですが、 まあ、しかし新しいにこした事はないですね。 お蕎麦などではやっているそうですが。 外米の使用、例えばオーストラリアなど南半球では収穫時期が逆になる ので、夏季の酒造りに外米を使うのはどうかと尋ねたのですが、何回か実 験してはいるものの、同じ品種でも外米では味が薄っぺらくなり、熟成も しないので、現在のところは、国産米を使っているという事でした。 気候の違いか、それとも土の質なのか、また栽培方法の違いなのか のところは不明なのだそうです。 ○造り・酒質に関する違い 現実問題として、現在、上級の酒はやはり冬季に醸造していますので、 夏季に造った酒と冬季に造った酒は比べようがないという事です、ここの ラインナップで言うと、本醸造や、通常の純米(空蔵シリーズや特別純米 は冬期醸造)はこの時期につくるのだそうです。 造りでは少々異なる点もあるということです。 夏季の酒造りの場合、仕込みで蒸し米を水と合わす時に、水の温度を 場よりも下げ、逆に蒸米をあまり冷まさずに高い温度で入れるのだそうで す。 夏季の場合は、この方が温度管理しやすいという事なのですが、副作用 として、米が溶け安く、酒化率が高くなるのだそうです。 結果としてはおそらくエキス分の高い酒ができるのではないかと思いま |