前回は、アルコール添加の是非について書きましたが、この記事に対してたくさんの反響をいただきました。
メールをお送りいただいた皆様、ありがとうございます。
さて、今回は、アルコール添加しないのに安いお酒がありますね。
そう、例の「米だけの酒」というやつです。
これはいったいどういうお酒なのか?
という事について書いていきたいと思います。
最近よく「米だけの酒」という名前のお酒が売っているのを目にすると思います。
「米だけの酒」ってつまり「純米酒」の事じゃないの?
そう考える人も多いと思います。
でも、「米だけの酒」って安いですよね。1.8リットルで1,000円を切る酒もあります。
これには理由があります。
いわゆる「純米酒」というのは、米と米麹と水だけで造るという決まりの他にも規定があるのです。
一つは精米歩合で、70%以下まで、削った白米を使用する事という規定があります。
この白米というのがポイントで、白米とは、農産物検査法により、二等以上に格付けされた玄米を精白した米という事になっています。
つまり、あまり品質的に好ましくないお米は使用できないわけです。
これは輸入米に対しても適応されるので、輸入枚であっても、農産物検査法で二等以上に格付けされれば、問題なく使用できるそうです。
それに対して「米だけの酒」はそういう規定がないので、クズ米だろうがなんだろうが、原料が米でさえあれば、ラベルに偽り無しという事になります。
しかし、私は個人的に考えるのですが、現在のように精白技術が進歩していなかった昔は、70%も削る事ができるはずもなく、また、米が今よりも貴重だった事を思えば、そんなにもったいない事をするはずはないのです。
すると「純米酒」というのは、現在の事情に合わせた規格で、伝統的な日本酒造りとはちょっと違うニュアンスになっていると思います。
確かに、精米歩合を上げると、純粋な澱粉質が得られるので、きれいな酒質が得られるでしょうが、それは酒質の問題で、美味しいお酒というものに対して、違う考え方を持つ酒もあるのです、例えば、滋賀の御代栄という藏元が造る「酒は男を磨く水」というお酒は精米歩合90%、つまり10%しかお米を削らずに造っています。
これは、これでなかなか美味しいお酒です。
そして、最近では山形の上喜元が限定で同じく、精米歩合90%のお酒を造っています。これもなかなか美味しいお酒でした。
精米歩合の高い低いは単に、酒質の問題で、精米歩合が高いから美味しいという認識は改めなければならないと感じました。
ただ、経済酒になってくると、液化仕込みやフルオートで工業的に造り出されるようになりますので、味はそんなに期待しない方が良いでしょう。
なにより、私は旨ければ良いとは思いません、お酒はそこに「美味しいお酒を飲んで貰いたい」という造り手の意志が反映しているからこそ良いと思うのです。
つまり、「マーケティングだけで作ったお酒って寂しいよなぁ」と思うのです。
お酒はこういうロマンチズムもいい「酔い」には必要だと思うのですが、みなさんはどう思いますか?
取材協力 櫻正宗株式会社