さて、9月も半ばになってそろそろ日本酒が恋しい季節になってきました。 しかし、巷にはたくさんの日本酒が並んでいます、それこそ、一升で1,000円以下の経 済酒から30,000円以上もする高級酒まで、いろいろです。 その中で良いお酒、飲み飽きしないお酒とはどういうお酒かを今回は研究していきた いと思います。 私は一応酒屋ですので、試飲という事をしばしばします。 しかし、一杯口に含んで美味しく感じるお酒が、杯を重ねると飽きてしまったりのど につかえるという、またなんという事もない地味なお酒が杯を重ねる事に味わいに深み を増して、心地好さを誘うという事はみなさんもしばしば経験する事と思います。 もちろん身体のコンディションも一つの重要な要素ですが、どうもそれだけではなさ そうです。 ではなぜ、美味しかったはずのお酒が杯を重ねる事に美味しくなくなったり、逆に美 味しく感じるようになったりするのでしょうか? 実に不思議な事です。 ◆良いお酒って? 一つの意見としてですが、のみ飽きするお酒は、作りが弱いという説がありま す。 これは手っ取り早く作って、後はブレンドや添加物で味をごまかしているという 事です。もちろんブレンドも一つの技術ですが、元もとの酒の出来が良くないもの は、やはり杯を重ねる事に馬脚を表すという事です。 ここで言うしっかりした作りとは、良い酒米を使い、乾燥した蒸気で充分に締ま った蒸米を作り、丁寧に酒母や麹を作って、充分熟成したお酒の事です。 蒸米で手を抜くと、弱い腰砕けのお酒になるといいます。そういうお酒は熟成に 耐える事ができないので、早く出荷されます。また、もろみの時に発生した香り 成分を凝縮したものを後で添加したりする事も味に悪影響を与える事になります。 無理なく加熱しながら香りを残す為には瓶火入れといってお酒を先に瓶詰し、そ のまま熱湯につけるという方法しかありません、ただしこの方法はとても手間がか かります。 つまり、良いお酒はやはり、手間暇を惜しんでは作れないという事なのです。 こうした作りの上で、本醸造・純米酒・吟醸・大吟醸などのかく作りの中で良い お酒というものが存在します。 価格が高いから良い酒というものではないのです。 ◆どうやって見分けるか? しかし、きき酒を普段している人でもなかなかきちっと作ったお酒とそうで無い お酒を見分ける事は難しいものです、見た目の味というのはかなりの部分ブレンド 技術でカバーできるのです。 だけど、ブレンドで美味しくなっているので、その濃度が変わると、とたんに味 のバランスが崩れてしまいます。つまり水を足してやると作りの貧弱なお酒はすぐ に馬脚を表してしまうという事です。 みなさんも一度試してみてください。 あと、この他にも本醸造や純米などのお燗ができるお酒の場合は、燗冷まし(一 度お燗をして冷ました酒)で試してみるのが一番です。 燗冷ましで、へんな苦みがでたり、水飴のようになったり、水っぽく腰砕けにな るお酒はやはりきちんと作っているお酒とは言い難いものです。 酒も人間と同じで苦境に立った時こそ本質が見えてくるものなのですねえ。 |